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Reaction Organic Chemistry Laboratory,
Department of Appl. Chem., Ehime Univ.

研究内容research

3.イノシトールリン酸類の化学合成

Ins(1,4,5)P3の化学合成と新しい合成手法の開発

 我々は10ヶ月かけてIP3のfirst synthesisに成功しました。その当時、イノシトールの化学は未熟で、遅れた分野でした。この現状を身にしみて経験し、イノシトール類の効率的全合成を達成していくためには、新しい方法論の開発を行わなければならないと思い、いろいろ検討することにしました。

1)リン酸化法
 イノシトールがリン酸エステルになったものが多いので、新しいリン酸化法が必要となりました。これについて種々検討した結果、分子内にあるすべての水酸基をリン酸化する「徹底的リン酸化法」として、XEPAと略称する新しい亜リン酸アミドを開発しました。現在市販もされるに至っています。一方、部分的にリン酸化できればPI(4,5)P2 などのイノシトールリン脂質の合成が容易となります。そのような「選択的リン酸化法」として下に示すようなホスファイトと用いる方法を見いだしました。

  「徹底的リン酸化法」

    

  「選択的リン酸化」

    


2)グリコシル化法
 糖のついたイノシトール誘導体も重要なものが知られています。これらの合成にはイノシトールにうまく糖を導入する手段が必要です。イノシトールは反応性が低い場合が多いので、高い反応性をもちかつ、分子内の種々の官能基を損なうことなく糖を導入する新しいグリコシル化法を必要としていましたが、糖ホスファイトを用いる方法を開発することにより、うまく目的物を合成できるようになりました。この新しい合成法を開発するきっかけになった経緯を後ほど述べます。




3)ホスファイトの化学
 リン酸化法の開発研究を基にして、P(III)の化学に興味を持ち、グリコシル化法を始めいくつかの研究を行いました。それを図に示しました。




4)その他の合成手法の開発
 上に述べたもののほか、さまざまなイノシトールリン酸類を合成するうえで有利となるいくつかの手法を開拓してきました。動的光学分割法、水酸基やリン酸の保護基、アシル基の脱保護法などですが、それらは下に紹介する代表的なイノシトールリン酸類の合成例の中で使われています。

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