① 高性能触媒創成を目指した研究
効率的な合成反応開発を目指すために,高性能な触媒を創り出すことを考え研究を行っている。対象としている遷移金属触媒は,触媒金属周りの環境が触媒の性能(反応性・選択性)に大きく影響することから,その金属周りの環境をいかに作るか,という観点から,様々なアプローチで研究を進めている。
② 高効率触媒反応の開発
既存の反応には,高価な貴金属触媒が必要であったり,反応効率や原子効率が悪いものが多く,まだまだ改善すべき課題は多い。例えば,アルコールのシリル化は,塩基の存在下でアルコールとクロロシランの反応により行うのが一般的であるが,クロロシランが湿気に弱いため取扱い難いことに加え,大量の塩を副生するため原子効率が悪い。そこで,アルコールとヒドロシランを用いる触媒的脱水素シリル化反応が近年注目されているが,本反応ではRhやIrなど高価な貴金属触媒が多く用いられている。一方我々は,安価な卑金属であるNiを中心金属とする含窒素ヘテロ環カルベンNi錯体が本反応の良い触媒となることを報告した。
③ 新しく開発した反応をベースに新物質・新材料の開発に挑む
配位子のために開発した有機リン化合物自在合成法を使い,有機リンを簡単に組み込める『元素ブロック』として使った新たな材料開発に取り組んでいる。当研究室としては初の高分子への挑戦となる新しい研究課題である。