化学センサガスセンサ
「センサとは、人間の五感の働きを代行する人工的な装置である」と良く言われます。人間の五感には、視覚、聴覚、触角、臭覚、味覚がありますが、これらの感覚の中で、光や音、圧力、加速度、流量などといった物理量を対象とした感覚に対応するセンサを物理センサと呼び、化学物質の種類や濃度を検知対象とした感覚に対応するセンサが化学センサと呼ばれます。したがって、五感のうちの嗅覚と味覚にあたるものが化学センサということになります。化学センサには、対象とする化学物質の違いによっていろいろな種類のものがあります。例えば、ガスセンサ、湿度センサ、イオンセンサ、バイオセンサなどです。センサは、ケーブルという神経で頭脳であるコンピュータへとつながれ情報処理がなされるという点においても、人間の五感と良く似ていると言えます。
ガスセンサは五感の中の嗅覚に相当します。人間を含む動物の嗅覚は非常にすぐれており、我々は花や香水の臭いをかげばそれが何であるかはある程度わかります。これらの能力を凌ぐガスセンサを作製するのは容易なことではありません。しかしその一方で、人間の嗅覚では対応できないこともたくさんあります。まず、我々の嗅覚は使用している間に疲労してくる上に、個人差もあるため、客観的な判断を下すことが困難です。また、臭いの無いガスを検知したい、あるいは有毒であり直接臭いを嗅ぐことができないガスを検知したいといった場合は、人工的な方法に頼らざるを得ません。分析装置を使用すれば、確かに精度よくガスの濃度を測定することはできますが、その操作には専門的な知識が必要であり、装置が大型で高価です。したがって、私たちの生活の中に広く普及させる用途には向いていません。そのために、小型で安価で誰でも操作できるガスセンサの開発が必要なのです。
ガスセンサの研究は、始めはガス漏れ事故の防止といった安全管理の分野から発展してきました。現在ではその用途も広がり、大気汚染問題の解決のため(大気汚染物質の排出量や汚染の実態を計測)、私たちの生活を便利で快適なものにするため(湿度や室内汚染物質の計測)、様々な病気の診断のため(呼気中微量ガスの濃度測定)、などに用いるガスセンサの開発が精力的に進められています。今後も、持続可能な社会の実現のため、多様なガスセンサの開発へのニーズがますます高まっています。
ナノ構造制御した新規高分子ガス検知膜の開発
水晶振動子を検知原理とした各種ガスセンサの開発
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伝導性高分子を利用したアンモニアガスセンサの開発
過酷な環境下で使用可能な湿度センサの開発
呼気中NOガス測定用光検出型センサの開発
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センサ特性測定装置
左から、電気抵抗型、水晶振動子型、電気容量型、光検出型