ここには,工学部工学科化学・生命科学コースの学生で,仮配属で当研究室に来ることを検討している人に対するメッセージを書きます.
事務的なことをここに書きます.
4月1日に,研究室名が,「生物分子工学(Biological Molecular Engineering)」に変更になり,旧堀研究室(応用生物化学)の山上先生と同じ枠になりました.ですので,研究室仮配属の際には,高井,冨川,山上でひとつの枠で配属を決めることになります.生物分子工学という名前もしっかり覚えてください.
以下,卒論を通じて学んでほしいことを書きます.ただし,高井が勝手にそう思っているだけのことです.
卒論の実験としてやることは,ざっくり,タンパク質の精製です.精製するということは,そのまえに,タンパク質を含む混合物があるということです.大腸菌に目的タンパク質を作らせた場合は,大腸菌のタンパク質その他と目的タンパク質が混ざったものができるわけですが,それの中から主として目的物のみを含む溶液(もちろん,水溶液で,緩衝剤や塩なども含まれています)を得るわけです.もし,生体試料から出発するのなら,均質化(ホモジナイズ)して,目的物を主に含む溶液になるまで,物理的な方法を試料を「分画(fractionation)」します.この精製の途中段階や,最終精製標品に対して,目的タンパク質の活性(触媒活性だったり他の分子への結合活性だったり)を確認してもらいます.
冨川先生のテーマの場合は,少々違うことをする可能性もあります.特に,タンパク質ではなくて,RNAを取ってきたりする場合もあります.活性を測定するのではなくて,化学構造を決める場合もあるかもしれません.あるいは,遺伝子を微生物に導入して,様子を観察する,というような実験もあるかもしれません.が,ここでは,主として,コムギ由来タンパク質合成系の再構成のテーマを念頭に置いています.
遺伝子の塩基配列で指定したアミノ酸配列のタンパク質が,きちんとできて,活性を持つ,ということを体験することは,とても楽しいことです.タンパク質合成の仕組みを頭でよく理解していても,実際に意図したとおりにできることを確かめることができると,心が躍ります.合成生物学の魅力は,何と言ってもこれです.生体試料から分画する場合でも,それを使って,塩基配列をアミノ酸配列に試験管内で変換することができるようにするために,そうしています.
逆に,タンパク質合成の仕組みを全く理解していなかったら,うまく実験ができても,何が楽しいのかわからないのかもしれません.
基本的には,この楽しい経験を,少しでも多くの学生と分かち合いたいと思っています.この楽しい経験,できたときの喜びを学んでほしいと思っています.冨川先生のテーマでも,基本的には同じで,自分で調べて何かがわかったときの喜びを学んでほしいのです.